こんにちは、ジーピーオンライン(@gpol_tw)のフロントエンドエンジニア、さとうです!
Webアニメーションの実装には、さまざまな技術的選択肢があります。それぞれの技術には独自の特性と利点、そして制約があり、プロジェクトのデザイン要件にあわせた最適な技術を選択することは、Webサイトの品質やユーザー体験を向上させる鍵となります。
しかし実際のプロジェクトでは、時間や予算、チームのスキルセットなどさまざまな制約によって最適な技術を選択できないこともあり、どの技術を使用すべきか悩むケースも少なくありません。(実際に、社内でも相談を受けることが多いです)
本記事では、Webアニメーション実装で使う主要な技術について、基本の知識をはじめ、それぞれの特徴やメリット・デメリット、推奨される利用シーンについて解説します。私自身の経験から得た技術選定のポイントも紹介していますので、アニメーション実装の技術選択に迷われている方は、ぜひ参考にしてください。
アニメーション実装もおまかせください!
もくじ
主なアニメーション実装技術の特徴
Webサイトにおけるアニメーション実装の技術は、主に以下の6つに分類できます。それぞれの特徴について詳しく解説します。
- CSS
- JavaScript
- SVG
- Canvas / WebGL
- 画像アニメーション
- 動画
CSS
CSSのtransitionや@keyframesを活用することで、DOM要素のプロパティを時間経過で変化させるアニメーションを手軽に実装できます。
メリット
- 実装コストが低い
シンプルなCSS記述だけでアニメーション実装ができ、JavaScriptの知識がなくても扱いやすいです。 - パフォーマンスが高い
他の技術に比べ軽量で、スムーズに動作します。 - ブラウザ対応が広い
主要なブラウザで安定して動作し、互換性も高いです。
デメリット
- 複雑なアニメーションには不向き
複数要素の連動や複雑なタイムライン制御など、高度な表現は難しいです。 - 動的な制御が難しい
アニメーションの開始、停止、リアルタイムの値変更など、動的な制御が必要な場合はJavaScriptとの連携が必要になります。 - コードが冗長的になりやすい
規模が大きいサイトや、複雑なアニメーションをCSSのみで実装しようとする場合は、CSSの記述量が増える傾向にあります。
推奨される利用シーン
- シンプルで直線的な動きのアニメーション
- ホバーアニメーション、フェードインアニメーション
- @keyframesを用いたループアニメーション
- シンプルなマスク・フィルターアニメーション
- ナビゲーションなどUI要素の状態切り替えアニメーション
CSSアニメーションは、手軽さとパフォーマンスの高さが魅力ですが、複雑な演出や動的制御が求められる場合はJavaScriptとの併用が必要になります。
さらに、CSSアニメーションのパフォーマンスを最適化する方法について知りたい方は、以下の記事も参考になさってください。
【関連記事】重いCSSアニメーションの対処法は最適なプロパティの使用でカクつき防止!
JavaScript
JavaScriptは、DOM要素のプロパティやスタイルを動的に変更することで、幅広いアニメーション表現を実現できます。CSSと同様の表現も可能です。
GSAPなどのライブラリを活用することで、タイムラインやイージングなどの複雑な制御もしやすくなります。
メリット
- 複雑な制御が可能
アニメーションのタイムライン設定やイージングなど細かな挙動を柔軟に制御できます。物理演算や複数要素の連動、複雑なパララックスなど、CSSでは難しい高度なアニメーションが実装でき、多様な表現が可能です。
- 高いインタラクティブ性
ユーザーの操作(クリック、スクロール、キー入力など)やリアルタイムで取得した情報をもとに、動的にアニメーションを生成・変更できます。
デメリット
- 実装コストがやや高い
CSSと比べてコード量が増え、JavaScriptやライブラリの学習コストが必要になるため、初心者にはハードルが高いです。 - パフォーマンスへの影響
複雑な処理はブラウザのメインスレッドに負荷をかけやすく、CSSアニメーションと比較するとページ全体のパフォーマンスに影響が出やすいです。
推奨される利用シーン
- 複数の要素が連動する複雑なタイムラインアニメーション
- ユーザー操作や画面サイズに応じて動的に変化するアニメーション
- スクロール連動アニメーションやパララックス効果
- requestAnimationFrameを使用した動的なループアニメーション
JavaScriptアニメーションは、高度な制御とインタラクティブ性が求められる場面で特に有効です。一方で、実装コストやパフォーマンスへの配慮が必要となるため、用途や目的に応じて選択しましょう。
SVGアニメーション
SVG(Scalable Vector Graphics)は、ベクター形式の画像を用いたアニメーション手法です。パスの描画や形状の変形、パスに沿った要素の移動、色の変化、マスクやフィルター効果を使用した表現などが可能です。AfterEffectsで作成したアニメーションをLottie経由で組み込むこともできます。
メリット
- 解像度に依存しない
ベクター形式のため、拡大・縮小しても画質が劣化せずに高解像度ディスプレイでも鮮明に表示されます。 - パフォーマンスが高い
テキストベースで比較的軽量なため、ページの読み込み速度や描画パフォーマンスに優れています。 - 表現力が高い
CSSやJavaScriptだけでは難しい複雑なパスや図形の変形、マスク・フィルター効果のアニメーションも実現可能です。 - Lottieによる高度な表現が可能
AfterEffectsなどで作成した高度なモーショングラフィックスをそのままWebに組み込めます。
デメリット
- 複雑な3Dアニメーションには不向き
SVGは2D表現が中心で、3D的な表現は難しいです。 - 実装難度がやや高い
SVG独自のタグや属性、アニメーション手法の知識が必要で、初期の学習コストはやや高いです。 - ブラウザ互換性の問題
主要ブラウザで広くサポートされていますが、ブラウザ間で挙動に差が出る場合もあります。
推奨される利用シーン
- ロゴやアイコン、複雑な図形などのパスアニメーション
- 解像度に依存しない表示が必要なアニメーション
- Lottieを使ったモーショングラフィックス
- ページのローディングアニメーションや、インタラクティブなボタン・グラフ
SVGアニメーションは軽量かつ高精細な表現が求められる場面や、複雑な図形やパスの動きを実装したい場合に最適です。CSSやJavaScriptとの組み合わせで、よりインタラクティブな演出も実現できます。
活用事例
背景のラインアニメーションで、SVGが活用されている事例です。時間経過やスクロールにあわせて、パスに沿ったラインが描画されます。
Canvas/WebGL
Canvas APIやWebGLを使用し、canvasタグ上にグラフィックスを直接描画するアニメーション手法です。
ピクセル単位で2D/3Dグラフィックスをリアルタイムにレンダリングでき、モデリングツールで作成された3Dモデルやアニメーションデータの組み込みも可能です。実装時はThree.jsやPixiJSなどのライブラリがよく使われます。
メリット
- 高度なグラフィックス表現
他の技術では困難な2D/3Dグラフィックスや、複雑なエフェクトの描画が可能です。 - リアルタイムレンダリング
ピクセル単位での描画やエフェクト生成をリアルタイムでおこなえます。 - 高いインタラクティブ性
ユーザー操作に応じて動的に変化するアニメーションや、高度なインタラクションも実現できます。
デメリット
- 実装コストが高い
他の技術と比較して専門知識が必要で、実装やメンテナンスのコストが高くなります。 - パフォーマンスへの影響
描画内容や処理の複雑さによっては、ブラウザやデバイスに大きな負荷がかかることがあります。
推奨される利用シーン
- リアルタイムでのレンダリングが必要なアニメーション
- 大量のオブジェクトやパーティクルを動かすアニメーション
- Blenderなどのツールで作成した3Dモデルデータを活用したアニメーション
- 高度なエフェクトやインタラクションが必要なアニメーション
Canvas/WebGLは、複雑なビジュアルや3D表現、インタラクティブな演出を実現したい場合に適しています。表現力と自由度が非常に高い反面、専門知識やパフォーマンス管理が求められる技術です。
活用事例
WebGLを使用したスクロール連動型のアニメーションが実装されており、Webサイトへの没入感を高めるインタラクティブなトップページとなっています。
制作実績ページはこちら:https://www.gpol.co.jp/works/65/
WebGLの概要を知りたい方は、以下の記事も参考になさってください。
【関連記事】WebGLの後継WebGPUとは?WEBデザイナー向けに解説!
画像アニメーション
WebP、APNG、GIFなどのアニメーション画像や、CSSスプライトを使用してあらかじめ作成されたフレームを連続して再生するアニメーション手法です。
メリット
- コードでは表現できないアニメーションを実装できる
イラストやデザインされたアニメーションを、そのままWeb上に実装できます。 - 実装が容易
画像を配置するだけでアニメーションを導入でき、コーディングの手間が少ないため、扱いやすいです。
デメリット
- 細かな制御ができない
再生・停止などのインタラクティブな制御が限定的で、ユーザー操作に応じた柔軟な動作は難しいです。 - パフォーマンスへの影響
解像度や再生時間の長いアニメーションは、ファイルサイズが大きくなりやすく、ページの読み込み速度やパフォーマンスに影響が出やすいです。特に1ページ内に複数のアニメーション画像を使用すると、その影響は顕著になります。 - メンテナンス性が低い
アニメーション内容を変更する場合、画像ファイル自体を作り直す必要があり、運用コストが高くなります。
推奨される利用シーン
- 短いループアニメーションをピンポイントで使いたい場合
- キャラクターやイラストなど、グラフィック重視のアニメーション
画像アニメーションは、イラストやグラフィックデザインをそのまま動かして表現したい場合に適しています。
WebPは高圧縮かつ高画質で、今後主流となる見込みです。APNGは高品質な透過アニメーションに強みがあり、GIFは互換性重視の用途で今でも使われています。用途や必要な表現に応じて、適した画像フォーマットを選択しましょう。
活用事例
ロゴのアニメーションやセクションの表示アニメーションにCSSスプライトが活用されている事例です。
動画
MP4などの動画ファイルをvideoタグでWebページに埋め込むことで、アニメーションや映像表現を実現する手法です。高品質なビジュアルや複雑な動きを、そのままWeb上で再現できるのが大きな特徴です。
メリット
- 高品質なビジュアル表現
実写映像や3DCG、複雑なモーショングラフィックスなど、他のWebアニメーション技術では再現が難しい表現もそのまま組み込めます。 - 多様な用途に対応
商品紹介、サービス説明、背景演出など、幅広いシーンで活用可能です。
デメリット
- ファイルサイズが大きい
解像度や再生時間によりファイルサイズが大きくなると、ページのロード時間やパフォーマンスに影響が出やすいです。 - レスポンシブ対応が難しい
PC・スマートフォンなどデバイスごとに最適な動画を用意する必要があり、全画面表示時のレイアウト調整も手間がかかります。 - インタラクティブ性が低い
基本的に制御できるのは再生・停止程度に限られ、ユーザーの操作や状態に応じた動的なコントロールは難しいです。 - メンテナンス性が低い
アニメーション内容を変更する場合、動画ファイル自体を作り直す必要があります。
推奨される利用シーン
- サイト全体の背景動画やメインビジュアルとしての演出
- コードや画像アニメーションで表現しきれない複雑なビジュアルの埋め込み
活用事例
キービジュアルの背景に動画アニメーションが使用されている事例です。複数の動画レイヤーをスクロールに連動させて繫ぎあわせて描画されています。
技術選定4つのポイント
Webアニメーションの技術選定では、「どの技術を使えば要件を満たせるか」「コストや運用面で無理がないか」など複数の点から比較・検討することが大切です。ここでは、技術選定時に特に意識したい4つのポイントについて紹介します。
1. 実現可能性・ブラウザ対応
要件を満たすアニメーションが、その技術で実装できるかを事前に確認しましょう。特定のブラウザでのみ使えるケースや、実装効率やパフォーマンスの観点でも注意が必要です。主要ブラウザやデバイスで安定して動作するかも重要な判断基準です。
ブラウザが公式にサポートしている技術であっても、バグやパフォーマンスの問題が発生するケースがあるため、事前に検証しましょう。
2. 実装コスト
実装にかかる時間や労力を正確に見積もって考慮しましょう。制作期間や予算が限られている場合、コストの高い技術を採用することは、慎重に検討する必要があります。
実装方法によっては、デザイン調整や動作検証に追加工数が発生するため、全体的なコストを総合的に見積もりましょう。
3. 品質・パフォーマンス
低パフォーマンスなアニメーションはユーザー体験に悪影響を与えるため、できるだけ軽量な技術を優先しましょう。
高負荷なアニメーションを導入する場合は、表現とパフォーマンスのどちらを重視するのかを確認するようにしましょう。
4. メンテナンスコスト
サイト公開後の運用・保守フェーズも見据えた技術選定をしましょう。サイトの運用期間やCMS導入の有無、更新頻度に応じて、メンテナンスのしやすさや将来的な拡張性も考慮する必要があります。
定期的なアップデートやバグ修正、セキュリティ対応など、継続的なコストも確認しましょう。
よりシンプルな方法を選択するステップ
上記のポイントを踏まえ、よりシンプルな技術から段階的に検討していくことが、開発コストや運用負担を抑えつつ高品質なアニメーションを実現するポイントです。具体的な検討手順は以下の通りです。
- CSSのみでの実装を検討する
- JavaScriptでの実装を検討する
- SVGを用いた表現が必要な場合は、SVGアニメーションを検討する
- Canvas/WebGL、画像アニメーション、動画など複雑な技術は最後に検討する
このように、シンプルな技術から複雑な技術へと段階的に検討をすることで、無駄な開発コストを抑え、パフォーマンスやメンテナンス性の高いアニメーションを実現しやすくなります。
まとめ
今回は、Webアニメーション実装で使われている主要な技術の特徴と、技術選定のポイントについて解説しました。
アニメーション実装技術の一覧と選定ポイント
- CSS:要素ごとのシンプルなアニメーションを実装する場合
- JavaScript:複雑なタイムラインやインタラクティブ性が必要な場合
- SVG:パスや複雑なマスク・フィルター効果を活用したい場合
- Canvas/WebGL:リアルタイムの2D/3D描画や高度なインタラクションが必要な場合
- 画像アニメーション:コードで再現の難しい画像やイラストの動きを表現する場合
- 動画:他技術では再現できない高品質なビジュアルや複雑な表現を実現したい場合
技術選定では、まずはCSSなどシンプルな技術から段階的に検討をして、要件に応じてJavaScriptやSVG、Canvas/WebGLなど段階的に選択肢を広げていくことが重要です。検討の際には、ブラウザやデバイスの対応状況・実装や運用コスト・パフォーマンス・メンテナンス性などを総合的に考慮し、プロジェクトに最適な技術を選びましょう。
各技術の特性を理解し、デザイナーやエンジニア、チーム全体で協力して選定を進めることで、より洗練されたWebアニメーションを実現できます。本記事が、アニメーション実装における技術選択の参考となれば幸いです。
インタラクティブなサイト制作もおまかせください!
サービス資料をダウンロードいただけます
Web制作会社をお探しの方へ向けて、当社のサービス内容を簡単にダウンロードできる資料請求フォームをご用意いたしました。
▼資料内容(一部)
-ジーピーオンラインについて
-ジーピーオンライン3つの力
-サイト作りのポリシー
-品質管理
-サービス紹介・実績

WRITERさとう フロントエンドエンジニア
Web開発会社でサイト制作を経験したのち、2015年にジーピーオンライン入社。パフォーマンスを考慮した実装が得意です。より高度なフロントエンドの技術を開発するFEEチームメンバーとしてWebGLを修得中。