なぜ質感が求められるのか?スキューモーフィズムでたどるWebデザインの歴史とUIトレンド

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なぜ質感が求められるのか?スキューモーフィズムでたどるWebデザインの歴史とUIトレンド

ハバネロと山猫

WRITERハバネロと山猫アートディレクター

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なぜ質感が求められるのか?スキューモーフィズムでたどるWebデザインの歴史とUIトレンド

こんにちは、ジーピーオンライン(@gpol_tw)のアートディレクター、ハバネロと山猫です!

Webデザインの世界において、一度は過去のものとなった「スキューモーフィズム」ですが、近年、アプリやWebのUIに「懐かしくも新しい質感」が戻りつつあるのを感じます。単なるリバイバルではない、スキューモーフィズムへの再評価の波はどこから来たのでしょうか。

本記事では、25年にわたり業界の変遷を辿ってきた立場から、スキューモーフィズムの誕生から衰退、現在進行形の進化までを歴史として解説します。デザインにおける「手触り感」が私たちにもたらす影響について、理解を深める一助となれば幸いです。

スキューモーフィズムとは?

スキューモーフィズムとは

スキューモーフィズム(Skeuomorphism)は、ギリシア語の「skeuos(入れ物)」と「morphê(形)」に由来する造語です。新しい技術や素材で作られたものに、古い素材や道具の名残を意図的に残すデザイン手法を指します。

プラスチックの植木鉢に陶器風の模様を入れたり、電気ストーブを薪ストーブ風に見せたりするのは、まさにスキューモーフィズムの典型例です。

UIデザインにおけるスキューモーフィズム

UIデザインでのスキューモーフィズムとは、木目のテクスチャや光沢感のあるボタン、紙のノートのステッチ(縫い目)など、現実世界の物質感を再現する手法を指します。その目的は「見たまま使えるUI」を作ることです。物理世界の経験を借りることで、ユーザーが初めて触れるインターフェースでも、直感的に操作できるようにする考え方です。

スキューモーフィズムで表現したボリュームボタンUIの例

インターネット黎明期(〜2000年)

2000年前後のインターネットは、まさに“新しい宇宙”が生まれたタイミングでした。まだ商業サイトよりも、クリエイター個人の「かっこいい」を自由に追求する実験的なWebサイトが多かった時代です。

2000年代初頭のWebデザイン

Webデザインは新たなオンライン体験にあわせて、テクノロジーを前面に出したグラフィカルなスタイルへと移行しました。特にFlash(フラッシュ)の登場は、インタラクティブな表現を急速に普及させました。

有名な例として、2Advanced Studiosのサイトは、当時の「未来っぽさ」を体現した象徴的な存在でした。フルFlashで構築されたインターフェースは、SF映画のような世界観、滑らかな画面遷移や効果音などの演出は、当時のクリエイターたちに大きな影響を与えました。

現在もアーカイブとしてスクリーンショットやYouTube動画が残っており、2000年代初頭のWeb表現や情報量の密度を感じ取れます。

参考1:2Advanced Studios v3 in 2001|Web Design Museum,
参考2:2Advanced Studios v2 flash website in 2001 | YouTube

当時のジーピーオンラインのWebサイトにも、未来的な雰囲気が色濃く反映されていました。Flashを用いたメインビジュアルや、演出を重視したレイアウトからは、2Advancedのようなサイバー感が伝わってきます。

WaybackMachine|株式会社ジーピーオンライン

Aqua UIの衝撃(2001)

Appleが開いたスキューモーフィズムの扉

2001年にAppleがmacOS Xとともに発表した「Aqua UI」は、スキューモーフィズム時代の扉を本格的に開いた存在です。光沢のあるボタン、光るスクロールバー、ガラスのような透明感といった現実世界を思わせる質感が、多くのデザイナーにインパクトを与えました。

この時期は、初めてコンピューターに触れる一般ユーザーが急増していた時代です。現実の物体を模したUIは、デジタル機器に不慣れな初心者に対し、「見れば使い方が想像できる」という安心感と、直感的な操作性を提供しました。

Wikimedia Commons「File:SWT-on-mac.png」ライセンス:Public Domain, 作者:Lex Viatkine

WebデザインにおけるAqua UIの影響

当時、Aqua UIが持つリッチなグラフィックをWeb上で再現することは技術的に難しく、Webデザインへの普及は緩やかでした。

しかし、Aqua UIに見られる光沢感やガラスのような質感のエフェクトは、インターネット環境が整ったWeb.2.0時代に再評価される流れとなります。

Frutiger AeroとWeb2.0のビジュアル文化(2006〜2010)

グロッシーなら新しい

2000年代半ばから後半にかけて、Windows VistaやさまざまなWebサービスを中心に、グロッシーでキラキラしたビジュアルが大流行します。

ロゴへのグロス加工、背景へのブラー効果といった表現が好まれ、「ツヤツヤしていること」が先進性を示す共通の価値観となっていた時期です。このビジュアルスタイルは、後に「Frutiger Aero(フルーティガー・エアロ)」と呼ばれるようになります。

Frutiger Aero(フルーティガー・エアロ)の例

Frutiger Aeroの背景:Web2.0時代の到来

スキューモーフィズムで表現したアイコンアプリの例

Frutiger Aeroとは、イギリスの交通標識に使われていたヒューマニスト・サンセリフ書体「Frutiger」と、Windows Vistaの透明感のあるUI「Aero」を組み合わせた造語です。ガラスのような質感とシステムグラフィックを融合させた世界観が大きな特徴でした。

トレンドの背景には、Webが単に情報を「読む」場所から、誰もが情報を「発信・共有」する「Web2.0」へと進化したことがあります。

ブログ、SNS、動画共有サービスの普及により、サービス自体の存在感や技術力をリッチな見た目でアピールすることが重要視されたのです。

WebデザインにおけるFrutiger Aeroの影響

この時期は実装技術も向上し、画像を多用したリッチなWebデザインが主流でした。Flash全盛期には、リッチなグラフィックとインタラクティブな表現をもつWebサイトが次々と生まれます。

デザイナーたちはレイヤー効果を駆使して、「いかに効率的かつ完璧にツヤツヤしたボタンを作り上げるか」に情熱を注いでいました。

iOSにおけるリアルUIの確立(2007〜2012)

Appleによるスキューモーフィズムの推進

2007年のiPhone登場を機に、AppleはモバイルUIにおいて、現実の質感を模倣したスキューモーフィズムのUIデザインを突き詰めていきます。

革張りのカレンダー、紙のノート、フェルト素材のGame Centerなど、本物の道具をそのまま閉じ込めたようなUIは一度見たら忘れられないほどの強い存在感でした。

スキューモーフィズムで表現したアプリアイコンの例

スマートフォン時代におけるスキューモーフィズムの役割

背景にあるのは、スマートフォンの普及です。あらゆる世代の人々が、初めてのタッチUI体験をする時代が到来しました。

現実の道具に似せたデザインでは、「ここがメモ帳の機能」「これが操作ボタン」といった役割を直感的に伝え、誰もが迷わず、安心して操作できるUI体験を得られるようになりました。

Webデザインにおけるスキューモーフィズムの影響

スキューモーフィズムの波はWebデザインにも広がり、ノートや付箋、紙がめくれるような視覚効果を取り入れた表現が一気に増えていきました。

当時、アイコンひとつに丸一日を費やして緻密に作り込むことは珍しくなく、CMSやWebアプリケーションのUIにおいても、リアルな質感を持つアイコンセットが非常に重宝される時代でした。

アイコンセット

※当時、当社が開発したCMS「WOW」の管理画面で実際に利用されていたアイコンセット

現在のWOWの管理画面はこちらでご覧いただけます。
【関連ページ】高いカスタマイズ性とセキュリティを提供する独自開発型CMS「WOW」

フラットデザインの台頭(2010〜2013)

スキューモーフィズム全盛期における潮流の変化

スキューモーフィズムが最も隆盛を極めた時期、対極として「装飾性を排除する」動きが静かに広がりを見せていました。

Microsoftが導入した「Metro UI」(Windows Phone 7やWindows 8に採用)は、この流れを象徴するものです。グリッドレイアウトとタイポグラフィを基軸としたミニマルなデザインによって、情報の構造そのものを前面に押し出すアプローチを採用していました。

フラットデザイン

「最小限の要素で、どれだけスムーズに意味を伝えられるか」という発想が、フラットデザイン以降のUIに受け継がれていきました。

Appleによる「脱スキューモーフィズム」への大転換

2013年に登場したiOS7は、デザイン史における決定的な転換点となりました。AppleがUIを全面的にフラットデザインへと再設計したことで、世界のデザイントレンドは一気に「脱スキューモーフィズム」へと傾きました。

スマートフォンとアプリが爆発的に普及し、表示速度やマルチデバイス対応、運用のしやすさが重要になったこともフラットデザイン普及の背景にあります。

陰影やテクスチャを削ぎ落とすことで、UI構造が明確になり、軽量で柔軟な設計がしやすくなったのです。

脱スキューモーフィズムへの大転換

Webデザインにおける影響とフラットデザインの洗練化

Web制作の現場においても、レスポンシブ対応やコンポーネント設計との相性から、このフラット化の流れは急速にスタンダードとなりました。

iPhoneの強力なブランド力によって、シンプルな見た目を「チープ」ではなく「洗練されている」ものとして受け取られたのも、フラットデザイン普及の大きな要因となりました。

控えめな「質感」の回帰(2014年以降)

立体感の再導入

フラットデザインが浸透した2010年代後半、UIにはわずかながらも「手触り」が再び取り入れられ始めます。

影や奥行きを控えめに加えたカードUIや、押下感を伝える柔らかなシャドウなど、機能的な理解しやすさと、画面操作の快適性の両方を実現しようとする動きへの回帰です。当時のジーピーオンラインのWebサイトにもしっかり反映されていました。

立体感の再導入

フラットデザインが主流になった結果、ユーザーの間では、画一的な見た目や操作性に対する飽和感、使いやすさに対する問題意識が強まります。

その流れの中で、控えめな質感や陰影を再導入し、直感的で触れたくなるようなUIを取り戻そうとする試みが、さまざまな場所で行われるようになりました。

マテリアルデザイン

Googleが2014年に発表したMaterial Designは、紙とインクのメタファーを用いて「デジタルなマテリアル」を定義し、影や動きによって物理世界らしい質感や階層を表現するためのデザインシステムです。

フラットな構造の上に、光や高さのルールを加えることで、スキューモーフィズムを現代的に再解釈した手法ともいえます。

その後の「質感」を用いたデザイン

「Neumorphism」や「Glassmorphism」といった新しいUIトレンドも登場します。

Neumorphismは柔らかな陰影で凹凸を、Glassmorphismは透明度・ブラー(ぼかし)・光沢を用いて、ガラスのような質感を表現するものです。いずれもフラットなデザイン構造の上に、薄く質感を重ねるアプローチが特徴です。

質感を用いたデザイン

VisionOSと「感覚」のスキューモーフィズム

最近では、Apple Vision Proなどに象徴される空間コンピューティングの流れの中で、UIは「画面上の見た目」から「空間内でのリアリティ」へと進化しつつあります。

半透明のガラス表現や光の扱いは、UIを「平面のパーツ」ではなく、背景から浮かび上がる「空間的なオブジェクト」として感じさせるための工夫と言えるでしょう。このガラスのような表現は、現在「Liquid Glass」という共通デザインとしてiOSやmacOSにも展開されています。

かつてのような物質的な質感を露骨に再現するのではなく、「触れそう」「そこにある気がする」といった感覚そのものを設計するかたちで、より感覚的なレベルのスキューモーフィズムが活用されています。

VisionOSと「感覚」のスキューモーフィズム

まとめ:時代と共に変化するスキューモーフィズムの役割

時代ごとのスキューモーフィズムの役割

時代背景と、デザインが果たすべき役割に応じて変化してきたスキューモーフィズムの変遷を、以下の表に整理します。

時代 デザインの背景(社会・技術) スキューモーフィズム的な役割
2000年代前半 PC操作への心理的な抵抗や不慣れなユーザーが多い時期 見た目のリアルさで「これが何で、どう使うのか」という安心感と直感的な操作を促す
Web2.0期 技術力の誇示や派手さが重視され、Webが情報を発信する場として成熟 リッチな質感や表現力で、サービス/製品の存在感や先進性を示す
2010年代フラット期 UX(ユーザー体験)の重要性の高まり、マルチデバイス対応とスピードが必須に 装飾要素を減らし、情報構造とコンテンツの視認性を最優先する
2020年代以降 情報過多によるユーザーの注意力が分散、デジタル疲れ 控えめな質感や細かな効果で、直感的な操作性と触れたくなるような心地よさを補完

根底にある共通課題

どの時代にも共通しているのは、「テクノロジーとユーザーの心理的な距離をどう縮めるか」という課題です。

スキューモーフィズムは、単なる一過性のデザイントレンドではなく、ユーザーにとっての「わかりやすさ」や「親しみやすさ」を調整するための手法として、形を変えながら現在もデザインの中に生き続けています。

これからのスキューモーフィズムとの付き合い方

空間コンピューティングやXR、音声UIなど、新しいインターフェースが増えるほど、スキューモーフィズム的な発想はむしろ重要になっていきます。

新しい体験をユーザーに受け入れてもらうためには、現実のどの感覚を借りてくるか、どこまで似せて、どこから先を抽象化するかの見極めが必要になるからです。

Web制作に携わるデザイナーがスキューモーフィズムを取り入れる場合、単に「レトロなスタイル」として捉えるのではなく、以下の2つのポイントを深く掘り下げて考えることで、より質の高いアウトプットへとつながるでしょう。

  • その質感や表現がなぜ必要なのか(必要性)
  • 誰に対して、どのような安心感や直感的な操作性を提供したいのか(目的と効果)

スキューモーフィズムは、決して過去のトレンドではありません。テクノロジーと人間の関わり方が変化するたびに、形を変えながら存在し続けるでしょう。とりわけ、AIのように振る舞いが見えにくい技術が広がる時代においては、人がその仕組みや役割を直感的に理解し、安心して関われるための“翻訳装置”として、あらためて重要性を増していきます。

長年デザイン業界に携わってきた者として、私はこれからも時代とユーザーを結びつけるデザインについて追求し続けたいと思います。

本記事が、みなさんのデザイン表現の探求や理解を深めるための一助となれば幸いです。

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この記事の著者
ハバネロと山猫

WRITERハバネロと山猫 アートディレクター

2007年にジーピーオンライン入社。グループ会社の株式会社メガホンに6年在籍したのち、2022年からジーピーオンラインへ移籍。アートディレクターとして、サイト制作のビジュアル面のプランニングとクオリティ管理などを担当。今関心があるのはデザインシステムの構築とBlenderです。

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